作品の価値は、価格を高く設定するだけで生まれるものではありません。何を作り、どれだけ作り、誰に、どのように届けるのか。そのすべてを自分の意思で選び続けることが、作り手の価値を形づくるのだと、木工作家・橋野浩行は考えています。
- 橋野浩行が考える「作品の価値」とは何か
- 誰にでも、いくらでも売ることを目指さない理由
- 希少な作品と、暮らしを支える日用品の役割の違い
- アートフォルムが作品を届けるときに大切にしたいこと
価値を守ることも、モノづくりの一部
優れたブランドが長い時間をかけて輝き続ける姿に触れたとき、橋野は、作品を作ることと、その価値を守ることは切り離せないのだとあらためて感じました。
作り手が自らの価値を高め、それを正しく表現していくためには、ただ数を多く売ることだけを目標にするのではなく、作品の背景や手仕事の意味を理解してくださる方へ、丁寧に届ける姿勢が必要です。
「手に入りにくさ」は、演出だけでは生まれない
希少性という言葉から、意図的に数を減らしたり、購入を難しくしたりする方法を思い浮かべるかもしれません。しかし、アートフォルムが考える希少性は、単なる販売上の演出ではありません。
木には一本ごとに異なる木目があり、同じ形を削っても同じ表情にはなりません。素材を見極め、手で削り、磨き、仕上がりを確かめる。一人の作り手が責任を持って行える仕事には、おのずと限りがあります。
大量に作れないこと、同じものを再現できないこと、作り手本人からしか生まれない形があること。その自然な限界こそが、「あなたからしか買えない理由」になります。
橋野浩行の作品と、木が持つ一つひとつの表情をご覧ください。
作品と日用品は、果たす役割が違う
橋野は、すべてのモノを希少にすればよいとは考えていません。日々の暮らしに欠かせない日用品や普及品には、必要とする人へ、良いものを十分に届ける役割があります。
暮らしを支える日用品
品質と価格のバランスを整え、必要とする多くの人へ安定して届けることが大切です。
作り手の表現としての作品
素材、制作時間、造形、背景まで含めた価値を理解する方へ、無理に数を増やさず届けることが大切です。
「生活を支える供給」と「作品の価値を守る供給」。どちらが優れているという話ではありません。それぞれの役割を理解し、同じ基準で扱わないことが、市場の健全さにつながるのではないでしょうか。
価格ではなく、理由を伝える
作品の価値を守るために必要なのは、値段だけを高くすることではありません。なぜこの木を選んだのか。なぜこの形になったのか。どのような手仕事が加えられているのか。そして、どのような時間を使う人とともに過ごしてほしいのか。
作り手自身がその理由を言葉にし、写真や展示の場で伝え続けること。その積み重ねが、価格とは別のところにある作品の価値を育てます。
理解してくださる方へ、長く残るものを
アートフォルムの作品は、誰かを排除するために作られているのではありません。木の個性、手仕事の時間、造形に込めた考えを知り、それでも手元に置きたいと思ってくださる方と出会うために作られています。
数を追うことより、作品を長く使い、価値を受け取ってくださる方へ届けること。橋野浩行は、その関係までを含めてモノづくりだと考えています。
一つの木と向き合って生まれた、橋野浩行の作品をご紹介しています。
